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2025年度WINGCUP 総評

2025年度WINGCUPは、残念ながら公演中止となった1団体を除く計8団体が最優秀賞をめぐってしのぎを削った。2024年に豊岡市で旗揚げ、「第1回大阪学生演劇祭」にて実行委員会賞を受賞するなど早くも快進撃を続ける劇団激男-ゲキダン2が最優秀賞、初のWINGCUP連覇を狙うことを公言していた劇団ヘラヘラ企画が優秀賞を受賞した。筆者は諸事情により劇評を担当した団体以外は記録映像というかたちにはなるが、全団体の作品を観劇させていただいた。コロナ禍は落ち着いたとはいえ、フルレンスの本公演を打つことへのハードルはまだ下がりそうにない気配がある。上演にこぎつけた全参加団体に敬意を表したい。

今回に限ったことではないが、WINGCUPは毎回の参加団体がその志や質、方向性において実に多様であること、作風の確立や様々な評価がなされていく「以前」の原石が集まっていることにその魅力がある。面白いか面白くないかは別として、ここにはある種の(主に関西小劇場演劇の)リアルの先端がある。筆者は、若い人たちの感性でつくられた作品こそが今のリアルを鏡のように映し出すと思っているが、いささか乱暴ではあるが今回最優秀賞・優秀賞に輝いた2団体に共通していたのは、「今」が透けてみえるような荒涼とした世界を背景とした、ディスコミュニケーションの空気であったように思う。作中の人物たちは、所与の条件として不条理が横たわる世界を生きている。富岡多恵子はかつて「いつの時代にも仕事師はいる。しかし、いちばんの仕事師は「時代」なのである」と述べたが、「時代」はこの2団体の力を通して自らの仕事を遂行したのだともいえる。

また、今回からWINGCUPはさらにリニューアルが図られ、審査員として畑律江氏、古川剛充氏、若手審査員として川村智基氏が新たに加わった。ちなみに第70回岸田國士戯曲賞最終候補に残るなど多方面で飛躍をみせる川村氏や、WINGCUP最優秀賞作品の戯曲がそのまま昨年のOMS戯曲賞大賞を受賞する快挙を成し遂げた中辻英恵氏など、近年のWINGCUPは未来の(関西)演劇界を担う人材を着実に送り出せているのです……ということもこの場で言っておかなければならないのは、関西は若手をとりあげるアカデミズム的批評どころか若手で今何が起こっているのかについてのジャーナリズムを担う媒体も人材も薄いからだ。そして、この劇評企画もこの度のリニューアルに伴って始まったのだが、筆者の原稿についての反応が団体を含めて今のところほぼ無いのは、その程度の文章だったからだとしたら猛省せねばならない。果たしてこの企画は誰か読んでいた人がいたのだろうか?

執筆者 プロフィール

三田村啓示(みたむらけいじ

主に関西圏を中心に、演劇について多岐にわたる活動を行う。第18回(2015年)関西現代演劇俳優賞受賞。KYOTO EXPERIMENT主催【批評プロジェクト 2025】にて、「告白と謎」が最終選出作に選ばれる。最近は労働と育児の合間に演劇作品に出られそうなら出たり、雑文や劇評を書いたりする。WINGCUP審査員については、ウイングカップ5より10年にわたり務めた。

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