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​600万年の孤独

 全く予備知識なしで見たから、焦った。まるで話がわからない。見終わった時は茫然とした。この原稿を書かなくてはならないのに、「大丈夫か、オレ」って感じ。チラシのイラストから勝手にエンタメ芝居を想像していたから、驚いた。とても静かな芝居だった。しかし観念的な会話は頭には残らないですり抜ける。

 ここにはお話らしいお話はないし単調だから、だんだん退屈していく。象徴的な会話のやり取りはよくわからないし、彼らの関係性も明確ではない。だいたいドラマ自体もないから、見ているうちにだんだん息苦しくなってくる。だけどそこが作者である林充希のねらいである。これはとても寂しい芝居である。それだけが伝わったならいい。

 芝居を見た後に読んだ当日パンフの登場人物紹介には男は異星人、女は機械女、宇宙人は実は地球人、とある。まさかの設定に驚く。芝居からはそんなことはわからなかった。

 舞台美術が素晴らしい。惹きつけられる。作、演出の林充希が同時に手掛けたこの舞台中央に作られたラブホテルの造形が見事だ。ふたりの男女がこのラブホの屋上で星を見ながら話している。彼らは板付きでここにいた。開演前には照明が当たらないからよく見えないけど、そこにいて、おしゃべりしている声がする。囁くような話声は聞き取れない。客席上手側にはひとり緑の宇宙人が座っている。(普段なら客席になる空間は一応アクティングエリアとして設定されている)

 こうして芝居が始まる前からこの芝居はもう始まっている。永遠のように長い時間が描かれる。ラブホにいるふたりは緑の宇宙人を見つけ彼らは3人で過ごす。ガガーリンを乗せたこともある人型宇宙船は独り言を呟きながら、同じ軌道を周り続ける。人間がいなくなった地球。かつて青く美しかった惑星は今では見る影もない。 

 「HOTEL愛ギャラクシー」で暮らす3人の孤独が胸に沁みる。誕生日の1本だけの蝋燭。やがてみんないなくなる。ラスト、たったひとり(彼女はアンドロイドだから)置いてきぼりになった彼女の独白と涙が胸に沁みる。確か600万年経った、と言っていた気がするが、その年月には意味はない。それは永遠と同じ時間。

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​撮影:脇田友

執筆者 プロフィール

広瀬泰弘(ひろせやすひろ
 

1980年頃から小劇場演劇を見始めて現在に到る。90年から2002年までスペースゼロ演劇賞選考委員。この頃から年間150本程の芝居をコンスタントに見ている。演劇情報誌「じゃむち」(93〜98)では創刊から休刊まで劇評、インタビュー等を担当。2019〜21年まで「イマージュ」で劇評。「演劇会議」等にも劇評を書く。大阪春の演劇まつり、HPF(大阪高校演劇祭)審査員は現在も続けている。WINGCUP審査員は昨年度まで担当。

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